コキ小学校を含むカンボジアの公立小学校では、月曜日から土曜日にかけて、朝7時〜11時、午後13時〜17時に授業がおこなわれています。二学期制を採用しており、1学期は10月1日に始まり2月まで、二学期は3月から7月の終わりまでとなっているため、授業が行われるのは年間10ヶ月ほどになります。 しかしながら、コキ小学校では、授業が行われるのは午前中のみとなっています。それには、子どもを午前中に学校に通わせ、午後は家事や仕事の手伝いをしてもらいたいという子どもたちの両親の意向が反映しています。そのため、たとえ午後に授業を行ったとしても、欠席者が多く出てしまうことが予想されます。
今年度、コキ小学校では1年生から5年生までの計5クラスで授業が行われており、2名の男性教員と男性の学校長が教鞭を執っています。教員1名が、1つの教室で2年生と3年生の複数学級を、もう1名が4年生と5年生を別々の教室で担当しています。校長先生は1年生の授業と事務を担当しています。
過去3年間のコキ小学校の統計によると、2009-2010年に133名だった全校生徒数が2010-2011年には121名に9.02%減少しています。しかしながら、2011−2012年には再び前年度から3.75%上昇し138名となり好ましい変化が見られています。さらに興味深いことに、2010-2011年の中退率は4.14%(3名)、留年率は14.58%に留まり、進級率は農村地域の平均とほぼ並ぶ83.26%となっています。
コキ小学校には、カンボジアの主要民族であるクメール族に加え、クイ族と呼ばれる少数民族の子どもたちも通っています。校内では、みなクメール語を話し、授業もクメール語で行われていますが、家に帰ると彼らは日常的にクイ語を話します。彼らの両親は田んぼやカッサバの畑を持つ農民で、非常に奥まった遠隔地で生活を営んでいます。彼らの家は小学校から約1km離れたところにあります。親の多くが、子どもを学校に通わせ教育を受けさせることの重要性を十分に認識しておらず、日々の生活を送ることが最大の関心事項になっているのが現状です。
新校舎建設以前は、子どもたちに制服はなく、写真にあるように様々な格好で学校に通っていました。しかし、今回視察でコキ小学校を訪問した際には、他の公立小学校と同様に、青いズボンやスカートに白いシャツという制服姿に身を包んだ子どもたちを何人か見かけました。校庭では、子どもたちがサッカーを楽しんだり、元気に跳ねたり走ったり姿が見られました。勉強のためだけでなく、こうして子どもたちが安全に活発に過ごせる場を提供できるのが学校なのだと、子どもたちの姿を見て改めて思いました。
新校舎の教室は、次のように割り当てられ使用されています。
– 教室1:2年生と3年生の複数学級が行われています。
– 教室2:4年生と5年生の複数学級が行われています。
– 教室3:真ん中に位置するこの教室は、1年生の授業のほか、職員室としても使用されているため、教室内には多くの教材が置かれていました。また、重要な書類等もこの教室で保管しているそうです。
1棟4室のトイレの建設より、衛生的で生徒数に対して十分な数のトイレが提供されました。
左側の部屋は教員用、中央の2部屋は男子生徒用、右側の1部屋は女子生徒用として使用されています。
生徒たちは当番制でトイレの水槽に水を溜め、快適に使用できるよう保っています。雨季には、プラスチック製の貯水タンクから、乾季にはポンプ式井戸から水を汲みバケツで水槽へ移しており、ここでも、ご支援頂いた設備が活躍しています。
3,000リットルを貯水できるこのタンクは、主に雨季に活用されています。教員たちは水浴びに使用したり、また子どもたちはトイレを流す際に使用したりしています。継続的な大雨が続くと屋根からつたう水のすべてをタンクに収めることはできませんが、日常に必要な分をまかなうには十分な水量が貯水されます。
校長先生は、よく朝の国歌斉唱の後、子どもたちに校内清掃を指導するほか、校舎の外壁を汚さないよう繰り返し呼びかけたり、また教室内に教材やポスターを貼付するなど、学校を運営し、教育環境を整えるうえで重要な役割を担っています。
一方、教員たちも年度始めに子どもたちの清掃スケジュールを作成しています。6組のグループが順番に、校舎の掃除だけでなく、草木の水やりや、トイレの水槽の補充を担当し、年度末にはその仕事ぶりが評価される仕組みになっています。 教室の装飾は、教員と子どもたちの共同作業になっており、子どもたちは描いた絵を壁に貼るなどして教室内をにぎやかに飾り付けています。このほかにも、靴は校舎の前に揃えて並べることや学校建設の記念樹に定期的に水をやることなどが指導されています。
– コキ小学校では、生徒数や、教員および子どもたちの状況に合わせて、適切に教室が割り当てられています。
– 子どもたちは、快適で安心して勉強に励めるとご支援頂いた新校舎に非常に満足している様子でした。
– また、校舎内に職員室を設けたため、教材や書類を安全かつ良い状態で保管することができるようになりました。
– 子どもたちと教員が衛生的で清潔なトイレを利用できるようになりました。
– 貯水タンクも季節に合わせて適切に活用されています。
– 子どもたちと教員たちの共同の取り組みによって校内はいつもきれいな状態に保たれています。
– 子どもたちは清潔なトイレを利用することの重要性を理解しており、それゆえ責任を持って積極的に清掃をしています。
– SVAが学校建設の際に作成した学校敷地利用計画図が助けとなり、それに沿って学校環境の整備が進められています。
– 現在、ワールド ビジョンによって、校庭内に東屋3棟及びブランコ、滑り台の設置が進められています。
コキ小学校は、ご支援頂いた校舎、設備および備品を、学校運営の現状や子どもたちの状況を考慮して最大限に活用しています。さらに進んで、午後に授業を開けるようになると、2つの学年が1つの教室で授業を受けるという状況が改善されますが、そうなると家族の手伝いをするため授業を欠席する子どもたちが増えるという新たな問題が生じることが懸念されます。
子どもたちは総じて、学校に通い、安全な校舎で勉強に集中できることをとても喜んでいます。雨が降っても走って雨宿り先を探すことなく、勉強に集中できるようになったコキ小学校を、子どもたちや教員だけでなく、地域の人々までもが、ホンモノの小学校になったと感じています。それだけでなく、新校舎建設後、子どもたちの進級率の向上、また、留年、中退率がカンボジアの農村地域の平均まで改善したことを大変喜ばしく思っています。
今回の視察でとくに印象的だったのは、学校が非常にきれいで整った状態で維持管理されていたことでした。遠隔地の学校では、好ましい状態を維持することが難しいことが多いのですが、コキ小学校に到着すると校舎の外壁のきれいさや、ゴミの落ちていない校庭、異臭のしないトイレがすぐに目に留まりました。学校運営そのものが向上してきたしるしともいえるでしょう。
小学校訪問時には、必ず校長先生と学校の敷地利用や、学校環境、管理運営について話し合う場を設けており、学校敷地利用計画図を維持するため、新たな建設や植林を計画する際は事前に相談してもらうようお願いしています。
ぼくは、1年生のとき、30人のクラスの中で優等賞をもらいました。ぼくは長男で、妹が一人、弟が一人いますが、今は一人でおばあちゃんと一緒に暮らしています。僕の家は学校から1.5kmほど離れているので、20分ほどかけて歩いて学校に通っています。学校から帰ると、午後は大好きな家事と農作業のお手伝いをします。時間のある時には、本を読むのが好きで、とくにクメール民話をよく読みます。将来は、学校の先生になって、次の世代のために教えたり、知識を共有したりしたいと思っています。新校舎ができて、新しい教室で勉強することにとてもワクワクしています。前の校舎には、壁も無く、日中はとても暑くて勉強どころではありませんでした。ご支援くださった方々に心から感謝しています。みなさまのご健康とご活躍をお祈りしています。
わたしの弟と妹もコキ小学校に通う2年生です。両親は、知人のカッサバ畑で働いています。家では、食事の準備、弟妹の世話、畑の手伝いなどやることがたくさんありますが、クラスでは12人の生徒の中で5番目の成績を取ったこともあります。学校までは毎日20分ほど歩いて通っていますが、飽きることはありません。私は、本読むことが好きなので、読む練習がたくさんできるクメール語の授業が一番好きです。この快適で便利な新しい校舎で勉強するのが嬉しいです。見た目だって、前の校舎よりずっとステキです。だから、学校環境をきれいに保つために、教室やトイレ、校庭の清掃や木の水やりに積極的に参加しています。最後になりますが、ご支援してくださったみなさまのご健闘とご健康をお祈りするとともに、みなさまの恩に応えられるよう、さらに勉強に励んでいくことを誓います。
コキ小学校